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RK Music presents Live「OVER ONE」オフィシャルレポート公開!
2025-05-14

2024年5月に開催された、RK Music史上初のオンラインライブフェス「VOICE SPARK」。焔魔るり、HACHI、瀬戸乃とと、水瀬 凪、KMNZ、VESPERBELLといった同社が擁する気鋭のアーティストはもちろん、CULUA、NEUN、MEDAという新人もデビューステージとして参加し、多彩な歌声がRK Musicの新たな歴史の幕開けを彩った。
あれから一年――。
その後もRK Musicは精力的にオーディションを行い、同年10月にCONA、IMI、XIDEN、ヨノ、2025年5月にはMEMESIA、LEWNE、⽻緒、Cil、深影がデビューした。RK Musicはかねてより「実力派」を重視しており、新人の歌唱力も高い水準を維持している。その実績もあり、耳聡い音楽ファンからの信頼も厚い。
こうした来歴があった上で、2025年5月9日、RK Music presents Live「OVER ONE」が開催された。出演したのは、この1年でデビューしたVirtual Artist12名。harevutaiでの動員に加え、YouTubeでは全編無料配信(アーカイブは期間限定公開)の大盤振る舞いだ。「一度聴いてくれれば、絶対に好きになるはず」という、RK Musicの自信と覚悟すら感じられる。
今回のライブの見どころは主に3点あった。第1回オーディション組3名の成長、第2回組4名の3Dモデルお披露目、そして第3回組5名のデビューだ。第1回組の成長とは、パフォーマンススキルもさることながら、この1年で増えたオリジナル曲により、個々のセトリの厚みが増した。第2回組は3Dモデルを得ることで、より臨場感のある表現を届けられるようになった。第3回組はまだ限られた情報しか明かされておらず、今日の初ステージを以て本格的に活動を開始する。
この夜はまさしく、RK Musicの新たな歴史を刻む一夜となった。ライブのクライマックスで、とあるアーティストが「今日ここが、新たなる特異点だ!」と叫ぶほどに。本稿はそんな「OVER ONE」の模様をレポートする。
定刻を迎え、オープニング映像が流れると、自然発生的にクラップが走り出す。アーティスト紹介パートでは、客席からそれぞれの名前が叫ばれた。

明転したステージに姿を現したのはCULUA。トップバッターのプレッシャーを振り払うように「OVER ONE!いくぞー!」と笑顔で叫ぶと、サビのダンスとコールが楽しいアップチューン「ベビ・デビ」を披露。事前の配信でレクチャーを受けていたこともあり、観客のコーレスも完璧だ。間髪入れずに「ハレバレ」へ。この曲は自身も作詞に携わっており、ポエトリーリーディングのようなパートには感情の高ぶりがにじむ。「1、2、3、4」の掛け声でCULUAも観客もジャンプするなど、1人目にしていきなり最高の一体感でブチ上げてきたからこそ、「次の曲で最後です」とのコメントに不満そうな声が上がるのも無理はない。ラストは、先日公開されたばかりのバラード「スペクトロライト」。この曲では情感たっぷりの歌で会場を満たした。
なお、会場ではアーティストのすぐ後ろにMVを見せるLEDがあったが、配信で見えるステージではかなり奥行があり、時にはアーティストの背後からの視点を映すカメラも。こうしたステージセットやカメラワークも視聴体験の濃度を強めていた。会場現地と配信とで違うタイプの臨場感があるため、現地で参加した人も、ぜひ改めて配信のアーカイブをチェックしてみてほしい。
歌い終えたCULUAは、続くMCをIMIとともに担当。今日初めて3Dの姿でステージに立ったIMIは、CULUAのパフォーマンスへの感動を涙まじりに語る。デビュー時期半年の差とはいえ、漂う先輩・後輩感がほほえましく、開場には笑顔が広がった。2人の説明によると、今日は「OVER ONE」の声かけを合図に、ライブが進行していくようだ。2人が「OVER!」と呼びかけ、観客が「ONE!」と応えることで、このMCパートは無事締めくくられた。

そのまま、ステージに残ったIMIが2番手を担当。K-POPをインスパイアした楽曲「Bad Girl」はイントロが始まった瞬間に歓声が上がり、IMIはMCとは打って変わってつややかな歌唱・ダンスを届ける。ビルドアップ・ドロップで会場がひとつになる感覚があまりに気持ちよく、音楽に興じる我々を、IMIは片目をとじた挑戦的な表情でさらに煽っていく。「まだまだ盛り上がる準備、できてますか?」と、続けて「DRIVE」へ。ハンドルを回すような振り付けや体幹を使ったウェーブで、harevutaiを熱狂へと導いた。

ここまではオープニングにぴったりの、アップテンポあるいはハードサウンドな楽曲が中心だったが、一度クールダウン。儚いビジュアルからは想像がつかないほどのエネルギッシュでエモーショナルな歌声を放つCONAにとって、ロックバラードは真骨頂だ。「⾺⿅は死なないと治らない」は、胸に刺さって残り続けるような歌詞表現が印象的な曲。さらにデビュー曲「神様はいつでも」では、<今でもここで息をしてる><ねぇ誰か気づいてよ ここに立ってるんだよ>というフレーズがライブで歌われることによって、歌詞解釈に新たな意味が加えられていく。歌い上げたCONAは、胸の前で祈るようにマイクをにぎりしめ、「ありがとう」と告げた。

ロングヘアを揺らしながら、ゆっくり振り向いたNEUN。ヒゲドライバーとPowerlessのタッグが手掛けた「Engelslied」は、バイオリンと鐘の音がゴシックな空気感を醸し出しており、神秘的なビジュアルの彼女にぴったりのデビュー曲だ。対してNEUN自身は歌だけでなく繊細な表情変化で楽曲のメッセージを表現したり、間奏ではクラップを要求したりと、そのパフォーマンスにはすでにトップアーティストの風格が漂う。続く「Divas Eid」「透命」ではウィスパー、ロングトーン、ラップパートなど、多彩な歌表現を以て持ち前のエンジェルボイスを余すことなく堪能させた。
明転すると、CONA・NEUNによるMCパートが始まった。初めて話すこともあって二人とも緊張し合っているようだったが、それぞれ楽曲にこめた思いをコメントした後は、先輩のNEUNが好きなおにぎりの具を質問。CONAの「いくら、鮭、わかめ」との回答には、NEUNから「(聞けて)満足!」と笑顔がこぼれた。
ここからは、いよいよ新人5名のデビューステージ。直前に発表されていた各々の1stシングルは、神話にちなんだ彼女らのルーツを表すような、強烈な世界観を感じる楽曲たちだった。今日はそれらが直接届けられるとあって、観客の期待感もMAXだ。

最初に登場したのは、その長身からパワフルな歌を放つ元神のMEMESIA。宝石のように輝く衣装が照明を反射し、ペンライトも紫一色に染まり、幻想的な空間が広がる。MEMESIAは繊細ながらも迫力のある歌声を響かせ、、1本のミュージカルを見たかのような強烈なインパクトを残した。

続けて魔神のCilの歌声だ。さわやかで明るい曲調の「潤⾊の祈り」は耳なじみの良いミドルレンジの声にぴったりで、純白の衣装も相まって会場は神聖な空気に包まれていく。落ちサビの切なげな表情と歌いまわしが印象的で、ぎゅっと胸をつかまれた。

「邪神」という肩書とは裏腹に、LEWNEの歌には子守歌のような包容力がある。後のMCや配信活動では天真爛漫な一面を出していくことになる彼女だが、邪神のシスターという彼女の歌声は癒しと切なさで会場を魅了した。

RK Musicのアーティストのオリジナル曲はいずれも粒ぞろいだが、中でも強い個性を持っているのが「死神」⽻緒の「献華」。ケルト風のサウンドに独特な厚みを持つ⽻緒の歌声が交わり、異世界に連れ出されたかのような体験をもたらした。

亜神の深影は幽霊になってなお歌い続ける。その理由をつづった「ロストメモリー」は心を揺さぶるバラードで、そっと囁くような優しい歌い出しから、徐々に歌にこめる感情を強めていき、思いがあふれ出すようなサビへと展開。深い藍色の瞳に時折光が反射して、涙のようにも見えた。
新人全員がソロステージを終えたその瞬間、モニターに突如「GREY MYTH」というロゴが現れた。突然の演出に「何が始まるんだ……?」と息をのむ会場だったが、初めて聞くイントロに加え、デビュー組5人のシルエットが見えた瞬間、ハッとしたようにペンライトを5色に切り替える。

そう、これから披露されるのは5人のユニット曲だ。その名も「OVER MYTH」。5柱の彼女らが、MYTH=すなわち神話を超越する。それが、これから彼女らが紡いでいく音楽にかける覚悟なのだろう。肝心の楽曲は新たな歴史のスタートにふさわしい不敵なEDMで、5人の歌声もソロとは全く異なる表情に。個性の強い歌声が溶け合うユニゾンの厚みは圧巻で、ユニットとしての強みを最大限に引き出している。曲終わり、暗転中の観客の嬉しそうなざわめきが、5人の初陣の大成功を物語っていた。
続くMCは、もちろん先ほどの5人だ。順番に自己紹介を終えた後は、改めてユニット「GREY MYTH」とユニット曲「OVER MYTH」を紹介した。進行役のMEMESIAが曲紹介中に噛んで笑いが起こったり、観客の盛り上がりに当てられたLEWNEが独特の動きで喜びを表したりと、初々しくもにぎやかなMCパートとなった。

新人たちのデビューを祝った後は、ジャンルに縛られない独自の音楽性をみせるXIDENがライブのボルテージを徐々に戻していく。不敵な横顔で登場した彼女が最初に歌ったのは「OVERLAY」。時折まじる吐息やエッジボイスが楽曲のスパイスとなり、「今日は最高の夜にしようね」とイタズラっぽくささやけば、たまらず沸き起こる歓声。続く「宿命」では伸びやかな高音が会場を包み込み、うっとりとした余韻を残した。

ライブも終盤、登場したのはバーチャルシンガーソングライターとして自身で作詞曲も手掛けるヨノ。「拝啓、はじまりの⾊」では、おだやかな歌い出しから、少しずつ音楽も感情も強まっていく。その圧倒的な表現力は、目に見えないはずの音の色彩が見えるようだ。「私の、私たちの大切な曲、聴いてください」との紹介で始まった「You're Notes」では、スキップのような軽やかなリズムをヨノの澄んだ歌声が彩り、会場は多幸感に包まれていく。そしてコーラスをファンと一緒に歌ったことで、「You're Notes」は今ここで、もう一度完成した。「今、あなたが生きているこの場所を愛せますように」――歌い終わりのこの言葉こそ、曲にこめた思いだったのかもしれない。
この日最後のMCを務めるのは、XIDEN、ヨノ、MEDA。出番が終わり表情に満足感が見られるXIDEN、ヨノに対し、MEDAは2人のパフォーマンスを大喜びで称える。XIDENが「私、かわいかったですか?かっこよかったですか?」と問うと、様々な褒め言葉が混ざり合って聞き取れないほどの歓声が上がり、一方のヨノは緊張を明かしつつも「みんなが応援してくれたおかげで楽しく歌えました」と感謝を告げた。さらにまだまだライブを終わらせたくない3人は、男子/女子、配信/会場と、定番の声出しも楽しむ。

最後のバトンを受け取り、大トリを務めるのはもちろんMEDA。「染脳」では一音目から目が覚めるようなパワフルな歌い出しで、harevutaiを一瞬でMEDA色に染めあげた。<大きく息を吸い込め!いくぞ!>といったライブらしいアレンジや、腕を振ってペンライトを加速させたかと思えばクラップに切り替えさせるなど、誰よりも彼女自身が最もライブを楽しんでいるようだ。「EMOVER FLOW」はライブにぴったりなアップテンポのロックチューン。MEDAはオープニングかと思わせるほどの熱いステージングで、終幕の予感を一気に断ち切ってしまった。「拳上げて!」と煽られれば、観客も出し惜しみなしの声出しと腕振りで呼応する。
ライブでは、曲の合間や間奏中にアーティストが発する言葉も音楽演出の一部だ。そういう意味で、3曲目「Sing-ularity」の間奏でMEDAが叫んだ「進化し続けるRK Music、これからもみんなついてきてくれるよね?今日ここが、新たなる特異点だ!」というコメントは、言葉選びまで含めてパーフェクトであったと言えよう。

ラストはMEDAの音頭で「OVER ONE」を叫び、大団円を迎えた。全身で音楽を浴びきった満足感と、終わってしまった寂しさがない交ぜになった余韻もつかの間、スクリーンにはエンドロールが流れ始める。出演順にアーティストとロゴが表示、さらにそれぞれのオリジナル曲のインストが流れるという粋な映像だ。さらにラストには「SPECIAL THANKS」としてアーティストそれぞれのファンネームが流され、RK Musicという箱とファンとの間にある温かい絆を実感した。
個性あふれる実力派アーティストが集まり、さまざまな音楽を奏でるRK Musicというオルゴール。ライブを視聴すること、特に現地で観覧することは、そのオルゴールの中に自ら飛び込むような体験だった。今日ステージに立った12名は、一番の先輩でもまだデビュー1年と、激動のバーチャル音楽シーンで産声を上げたばかりの存在だ。これからもっともっと増えていくであろう楽曲たち、ライブの機会、メンバー同士のかかわりの一つひとつを、追いかけていきたいと思う。
取材・文 | ヒガキユウカ |
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写真 | 中村ユタカ |